恐怖体験



此れは、ゆかが高校の時に部活の全国大会に出場するために、
上京し、其の帰りの出来事です。

ゆかは人込みが苦手です。
というか、知り合いじゃない人や顔見知りじゃない人は苦手です。
この全国大会の時に初めて東京に行きました。
初の大都会にカナリびびっていました。

全国大会への緊張より、
大都会への緊張の方が勝っていたと言っても、
あながち間違ってはいませんでした。

部活で行ったので、勿論一人では行動出来ませんでした。
其れが、ゆかの唯一の救いでした。


無事に何事も無く、数日間の滞在を終え、愛しの島根に帰るため、
部員一同&先生で東京駅に向かいました。

しかし、早く駅に着き過ぎてしまったために、新幹線を待つ事になりました。
皆、慣れない都会での滞在で疲れきっており、
待合室の椅子とイチャイチャしていました。

疲れきっている皆を横目に、島根に帰れるという喜びで、
テンションが上がり気味だったゆかは、
一人で駅をフラフラする事にしました。



・・・此れが大きな間違いでした。



ある売店の前でウロウロしていたゆかの後ろから、
イキナリ声がしました。


「何でも買ってあげるよ」

振り返ると、スーツ姿の男性が立っていました。
もちろん、ゆかは部活で来ていたので制服(ブレザー)でした。
其の男性は、素晴らしい笑顔でゆかを見ていました。
年齢は40代前後の男性でした。

其の男性は、ゆかの顔を見て、もう一度同じセリフを吐きました。


「何でも買ってあげるよ」

この時点ではマダ、冷静だったゆかは、普通に無視していました。

しかし、其の男性は、
ゆかの腕をしっかり掴んできました。


此れはマジでヤバイと思ったゆかは、
男性の腕を払おうと思いました。

まぁ・・・男性の力には勝てる筈も無いんですけどね。

身の危険をヒシヒシと感じ始めていたゆかは、
皆が居る所に帰る事を心に決めました。

決断した瞬間、歩き出しました。
掴まれていた腕は解放されましたが、
男性は付いて来ます。


「今一人なの?」


「こんな時間に制服着て何してるの?」


「今流行りのアレ(売●)でしょ?」


「いくらなの?」




投げかけられる質問を全て無視し、泣きそうになりながら、
必死に皆が居る場所へ向かいました。


そして、皆の姿が見えた瞬間、
また腕を掴まれました。


「僕とイイコトしようよ、ね?」

息を切らせながら、イヤラシイ目をした男性に腕を痛い程掴まれ、
ゆかが目指す場所とは逆方向に引き摺るようにして、
ゆかを連れて行きました。

この頃のゆかはマダ、男性と関係を持った事が無く、
マダマダ純情だったので、
恐怖で声も出ず、
連れて行かれていました。

男性のギラギラした目を見、ゲンナリし、
半分諦めかかったその時、

聞き覚えのある甘い声が聞こえました。



「ゆかぁ?何してるのぉ?」



振り向くと、部活の先輩でした。

ゆかは恐怖のあまり答える事が出来ませんでした。
しかし、ゆかの怯えた顔を見て、先輩は事を察したらしく、
男性に掴まれてる腕とは逆の腕を掴みました。
そして、ゆかが見た事もない恐ろしい顔をして、その男性に静かに言いました。



「一生使えないモノにして欲しい?」


男性も先輩ののような表情にびびったようで、
そそくさと逃げていきました。


先輩がに見えましたね、マジで。

先輩ののような顔は、もう見れないでしょうね。
先輩は普段は本当にお美しくて、
憧れの的でした。

先輩方が居なかったら、ゆかはどうなっていた事でしょう・・・。
マジで怖かったです。

今のゆかにはありえない体験です、ハイ。



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